クラペイロンの式と相転移についての例題

東工大 物質理工学院

今回は、\(CO_2\)の状態図をもとに、図の読み取りと相境界線とクラペイロンの式の関係についての考察です。掲載している問題は東工大物質理工学院H29[物理化学2]です。

クラペイロンの式と相転移についての例題

(1)圧力pと温度Tの条件下における、\(CO_2\)の状態図を示す。以下の問に答えよ。

状態図

状態図の読み取り

領域Ⅰ、Ⅱ、Ⅲにおける\(CO_2\)の安定状態を答えよ。

Ⅰ:固相 Ⅱ:液相 Ⅲ:気相

・一般的に、高圧でも安定的に存在できる状態は固相である。

・気相は低温でも定圧であれば安定的に存在できる。

点αを何と呼ぶか。また、点αでは/(CO_2\)はどのような状態にあるか

三重点。固相・液相・気相のすべてが同時に共存する点

\(CO_2\)を点Aから点Dまで等圧で温度をあげた際の状態変化を説明せよ。

固相からB点で固相・液相が共存し、温度が上昇すると液相のみになり、C点までいくと液相・気相が共存し、さらに温度が上がると気相のみになりD点となる。

点βを何と呼ぶか。また点βよりも圧力および温度が高いとき、\(CO_2\)はどのような状態、性質を示すか

臨界点。超臨界状態となり界面がなくなるので、気体の拡散性液体の溶解性を併せ持つ。\(CO_2\)の場合、様々な物質を溶解する。

□超臨界流体
臨界温度以上の時に加圧すると単一の相が出来上がり、この相の密度は気体よりも高い。このような単一の相を超臨界流体という。

クラペイロンの式と状態図の傾きにおける関係性

領域Ⅰと領域Ⅱの境界はほぼ直線であり、急峻な正の勾配を有している。この理由をクラペイロンの式におけるモルエンタルピー変化とモル体積変化から説明せよ。

クラペイロンの式

$$\frac{dP}{dT}=\frac{Δ_{trs}S}{Δ_{trs}V}$$

エントロピーで表されると考えずらいので、相変化の条件を用いて式を変形する。

相変化の時、T=一定であり、相平衡を保つためにはΔG=ΔH-TΔS=0であるため、

$$ΔS=\frac{ΔH}{T}$$

上式をクラペイロンの式に代入すると

$$\frac{dP}{dT}=\frac{Δ_{fus}H/T}{Δ_{trs}V}=\frac{Δ_{fus}H}{TΔ_{trs}V}$$

ここで、融解エンタルピーは常に正であり、さらに\(CO_2\)の場合は固体→液体では体積は大きくなるため変形したクラペイロンの式の左辺は常に正となる。したがって傾き(dP/dT)は正の勾配となる。

※多くの場合固体→液体における体積変化は正であるが、水は負となるため注意が必要である。

また、固体→液体における体積変化は小さいため、ΔVも小さくなり勾配が大きくなる。一方で、液体→気体における体積変化は大きいので、クラペイロンの式より境界線の勾配は小さくなる。

アレニウスの式と活性化エネルギー

(2)次の空欄①~⑥にあてはまる言葉を記せ。

ある反応の速度定数をk、温度をTとすると、アレニウスの式は(i)式のように表される。

$$lnk=lnA-\frac{E_a}{RT}・・・(i)$$

ここで、R、Aおよび\(E_a\)はそれぞれ、気体定数、頻度因子および活性化エネルギーである。この式を用いて、温度と速度定数の関係から活性化エネルギーを求めることが出来る。実験により、各温度における速度定数を測定し、縦軸にlnkを、横軸に①をプロットすると、その傾きaおよび切片bはそれぞれ②および③となり、活性化エネルギー\(E_a\)は下記の式で求められる。

$$E_a=④×⑤$$

したがって、傾きaの絶対値が大きいほど活性化エネルギー\(E_a\)は⑥

解答は、

①\(\frac{1}{T}\) ②\(\frac{-E_a}{R}\) ③lnA ④-R ⑤a ⑥小さくなる。

酢酸とエタノールのエステル化における平衡反応

(3)酢酸とエタノールのエステル化反応およびその逆反応は各基質濃度の一次式となり、その平衡は(ii)式で表される。反応速度および速度定数をそれぞれrおよびkで表し、正(右)方向を1、逆(左)方向をー1の添え字で表すものとする。以下の問に答えよ。

$$CH_3COOH+C_2H_5OH⇌CH_3COOC_2H_5+H_2O・・・(ii)$$

\(r_1\)および\(r_{-1}\)を、\(k_1\)および\(k_{-1}\)および基質濃度を用いて表せ。

ただし、反応基質がSの時その濃度を[S]と記すこととする。また、平衡定数Kを、反応基質濃度を用いて表せ。

$$r_1=k_1[CH_3COOH][C_2H_5OH]$$

$$r_{-1}=k_{-1}[CH_3COOC_2H_5][H_2O]$$

$$K=\frac{[CH_3COOC_2H_5][H_2O]}{[CH_3COOH][C_2H_5OH]}$$

反応速度は、微量のプロトンで大きくなる。この時のプロトンの役割の名称を記せ

酸触媒

②のようなプロトンの存在下の反応で、平衡に達するまでの時間と平衡定数はどうなるか

平衡に達するまでの時間は短くなるが、平衡定数は変わらない。

上記反応の100℃における平衡定数をK=4.0とする。エステル化反応を100℃で行い、平衡混合物中の組成を分析したところ、1Lの\(H_2O\),0.67 molの\(CH_3COOH\)、および0.82 molの\(C_2H_5OH\)が含まれていた。

この時に存在する\(CH_3COOC_2H_5\)の物質量はいくらか。

ただし、100℃における\(H_2O\)の密度を\(0.96 kgL^{-1}\)とし、有効数字2桁まで答えよ。

\(CH_3COOC_2H_5\)の物質量をxとすると、平衡定数の式は

$$K=\frac{x×\frac{0.96×10^3}{18}}{0.67×0.82}=4.0$$

これより、x=0.041 mol

以上が[物理化学2]の過去問・解答案です。また、本サイトでは院試についての情報も掲載しているためそちらもご覧ください。

コメント

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