理想気体のエントロピーの計算と温度変化についての考察

東工大 物質理工学院

今回は、単原子理想気体の仕事・エントロピーの計算と炭素とその酸化物の標準生成エンタルピー・標準反応ギブズエネルギーの計算とその考察についてです。掲載している問題は東工大物質理工学院H29[物理化学1]です。

理想気体のエントロピーの計算と温度変化についての考察

以下の設問(1),(2)に答えよ。

(1)単原子分子理想気体について以下の問に答えよ。ただし、数値は有効数字2桁まで求めよ。必要に応じて次の値を用いてもよい。\(R=8.3J・K^{-1}・mol^{-1},ln2=0.69,ln5=1.6\)

等温変化における仕事の計算

①筒状容器に0.040 molの期待が入っており、片側にピストンが備えられている。容器の温度を300Kに一定に保ちながら1.0Lから0.50Lにゆっくりと圧縮した。この、

圧縮に要する仕事を求めよ。

★仕事の定義

w=-Pdv

理想気体の状態方程式より、PV=nRTより、上式のPに代入して

$$w=-nRT\int_{1}^{0.5}\frac{dV}{V}=-0.04×8.3×300×ln\frac{0.5}{1}=69J$$

断熱自由膨張のエントロピー変化量

②図のように、各1.0Lの容積を持つ容器A、Bが開閉可能な弁C、Dとつながれている。容器Aに300Kの気体0.010 molが詰め込まれており、容器Bは真空で、弁C、Dは閉じられている。ここで弁Cを開放したところ、容器AとBが等圧になった。

この時の気体の温度・エントロピー変化量を求めよ。

ただし、壁と気体の熱の出入りはないものとする。

断熱自由膨張であるから、気体がした仕事と熱の出入りは0である。

また、単原子分子理想気体の場合、\(ΔU=\frac{3}{2}nRΔT\)であるため、

$$ΔU=q+w=0=\frac{3}{2}nRΔT$$

以上より、ΔT=0である。

ここで、エントロピーは状態関数であるから、その値は経路によらず始状態と終状態のみで決まる。したがって、実際には不可逆変化であるが、始状態から可逆変化で終状態まできたとして計算すると、

ΔU=q+w=0  ⇒  q=-w=PdVより

$$ΔS=\int \frac{dq}{T}=\int \frac{PdV}{T}=nR\int \frac{dV}{V}=nRln\frac{V_i}{V_f}$$

したがって、

$$ΔS=0.010 mol×8.3 JK^{-1}mol^{-1}×ln\frac{2.0}{1.0}=0.058 JK^{-1}$$

エンタルピー・ギブズエネルギーの計算

(2)炭素およびその酸化物の反応式(i)~(iii)について以下の問に答えよ。数値は有効数字3桁まで求めよ。

C(固体、グラファイト)+\(\frac{1}{2}O_2\)(気体)⇌CO(気体)  (i)

C(固体、グラファイト)+\(O_2\)(気体)⇌\(CO_2\)  (ii)

CO(気体)+\(\frac{1}{2}O_2\)(気体)⇌\(CO_2\)  (iii)

①CO(気体)および\(CO_2\)(気体)の標準生成エンタルピー\(ΔH^0\)は298Kにおいてそれぞれ\(-111kJmol^{-1}\)および\(-394kJmol^{-1}\)である。(iii)式の右向きの反応の

298Kにおける標準反応エンタルピーを求めよ。

$$Δ_rH^0=Δ_fH^0(CO_2)-{Δ_fH^0(CO)+\frac{1}{2}Δ_fH^0(O_2)}$$

$$=-394-(-111+0)=-283kJmol^{-1}$$

(ii)式の298Kにおける標準反応ギブズエネルギー\(ΔG^0\)を求めよ。

ただし、(ii)式の標準反応エントロピー変化\(ΔS^0\)は+2.90JK^{-1}mol^{-1}\)である。

$$ΔG^0=ΔH^0-TΔS^0=+394-298×2.90×10^{-3}=393kJmol^{-1}$$

④これらの反応式の相変化に着目し、標準反応エントロピー\(ΔS^0\)から標準反応ギブズエネルギー\(ΔG^0\)の温度変化を定性的に考慮すると以下のようになる。

(a)~(h)に当てはまる語句を示せ。

(i)式では気体の物質量が(a)ため、\(ΔS^0\)は(b)。温度を上昇させた際に、\(ΔG^0\)が、(c)ので、平衡は(d)。

(ii)式では、気体の物質量が(e)ため、\(ΔS^0\)は(f)。温度を上昇させた際に、\(ΔG^0\)が、(g)ので、平衡は(h)。

物質量が増加すると、乱雑さは増加するためエンタルピーも増加する。ΔG=H-TΔSより、ΔS>0の時、ΔG>0である。

(i)式では気体の物質量は\(\frac{1}{2}\)から1に増加している。また、(ii)式では\(\frac{3}{2}\)から1に減少している。

以上のことを踏まえると、以下のような解答となる。

(i)式では気体の物質量が増加するため、\(ΔS^0\)は正である。温度を上昇させた際に、\(ΔG^0\)が、減少するので、平衡は右に偏る

(ii)式では、気体の物質量が減少するため、\(ΔS^0\)は負である。温度を上昇させた際に、\(ΔG^0\)が、増加するので、平衡は左に偏る

以上が[物理化学1]の過去問・解答案です。続きの問題はこちらです。H29[物理化学2]

また、本サイトでは院試についての情報も掲載しているためそちらもご覧ください。

コメント

  1. […] […]

タイトルとURLをコピーしました