阻害剤が及ぼす反応速度への影響[院試で学ぶ]

東工大 物質理工学院

阻害剤が及ぼす反応速度への影響[院試で学ぶ]

今回は酵素反応において、阻害剤を用いた時の反応速度の変化をミカエリス-メンテン機構の導出とともに扱います。掲載している問題は東工大物質理工学院H30[5](1)です。本サイトでは過去問解説を通して大学化学の解説を行っていますので無機・物理化学についてもご覧ください。

ミカエリス-メンテン式の導出

以下の設問に答えよ。

(1)酵素反応に関する下の問①~⑤に答えよ。

酵素Eの活性部位に基質Sが特異的に結合して酵素-基質複合体ESを形成する。このとき、ESはEとSに戻るか、反応生成物Pを生じる。この酵素反応を以下のように仮定する。

$$E + S ⇔ ES → E + P$$

ここで、平衡反応の正反応の反応速度定数は\(k_1\),逆反応は\(k_{-1}\)であり、ESの解離反応の反応速度定数が\(k_2\)である。

①反応中間体ESの濃度[ES]に関する速度式に定常状態近似を適用し、[ES]を求めよ。

定常状態近似より、

$$\frac{d[ES]}{dt}=k_1[E][S]-k_{-1}[ES]-k_2[ES]≒0$$

$$[ES]=\frac{k_1[E][S]}{k_{-1}+k_2}$$

②全酵素の濃度\([E]_0\)について、\([E]_0=[E]+[ES]\)が成り立つとして、生成物Pの生成速度vが次のようにかけることを示せ。

$$v=\frac{V_{max}[S]}{K_m+[S]}$$

ただし、基質は酵素に対して十分量存在し、ミカエリス定数\(K_m\)および最大反応速度\(V_{max}\)について、\(K_m=\frac{k_{-1}+k_2}{k_1},V_{max}=k_2[E]_0\)が成り立つものとする。

上記で求めた[ES]を\([E]_0\)の式に代入して、[E]について求めると、

$$[E]_0=[E](1+\frac{k_1}{k_{-1}+k_{-1}}[S])$$

$$[E]=\frac{[E]_0}{1+\frac{[S]}{Km}}$$

よってpの生成速度は

$$\frac{d[P]}{dt}=k_2[ES]=\frac{k_2}{Km}[E][S]=\frac{k_2[E]_0[S]}{Km+[S]}=\frac{k_2[E]_0}{1+\frac{Km}{[S]}}$$

ここで、[S]>>Kmのとき、\(\frac{d[P]}{dt}=k_2[E]_0=V_{max}\)なので

$$V=\frac{V_{max}}{1+\frac{Km}{[S]}}=\frac{V_{max}[S]}{[S]+Km}$$

ラインウィーバーバークプロットでKmとVmaxを求める

③種々の基質濃度における酵素反応を行ったところ、その初速度が、下の表の「阻害剤なし」に示す通りに得られた。速度論的パラメーターであるKm,Vmaxを有効数字2桁まで求めよ。

基質濃度[kmol・\(m^{-3}\)]初速度\(kmol・m^{-3}min^{-1}]
阻害剤なし

阻害剤添加時
0.0020
0.0040
0.0080
0.0200
0.083
0.125
0.167
0.200
0.050
0.083
0.125
0.167
表 基質濃度と初速度の関係

②で求めた式を両辺逆数をとる。

$$\frac{1}{V}=\frac{1}{V_{max}}+\frac{Km}{V_{max}}・\frac{1}{[S]}$$

\(\frac{1}{[S]}に対して\frac{1}{V}をプロットして、その傾きと切片の値からKmとVmaxが求まる(ラインウィーバー・バークプロット)。それぞれの値を表にまとめると以下のようになる。

\(\frac{1}{[S]}\)500 250 125 50
\(\frac{1}{[V]}\)12  8  6  5

これらを最小二乗法により求めると、

y=4.12+0.0157x

よって

$$V_{max}=\frac{1}{4.12}=0.24kmol・m^{-3}min{-1}$$

$$Km=0.0157×V_{max}=3.8×10^{-3}kmol・m^{-3}$$

競合阻害をミカエリス式から導出する

④上記の実験系に、この酵素反応を阻害する阻害剤を添加したところ、表の「阻害剤添加時」に示す結果が得られた。この結果に基づいて、阻害剤が酵素Eに対してどのような阻害型を示すのか説明せよ。

③と同様にプロットしていくと

\(\frac{1}{[S]}\)500 250 125 50
\(\frac{1}{[V]}\)20  12  8  6

これらを最小二乗法により求めると、

y=4.23+0.0314x

阻害剤なしと比べると、切片はほぼ変化なしだが、傾きがちょうど2倍である。このように、阻害剤を添加して切片が不変で傾きが定数倍になることを競合阻害という。

なお、切片のみが変化して傾きが不変なのを不競合阻害といい、両方変化するのを非競合阻害という。

酵素固定化による反応速度の変化理由

③この酵素を、多孔性担体内部に均一に吸着させて固定化したところ、反応速度は溶液中で反応したときと比較して小さくなった。その理由を説明せよ。なお、固定化により酵素自体の活性は変化しないものとする。

粒子を固定することで反応するための表面積が減少してしまう。また、固定化により酵素の拡散律速となるため総括反応速度が低下する。

(※正直この解答は不完全だと思うのであまり参考にならないかもしれません。正しい解答が分かる方は教えてください・・・。)

以上が酵素反応についての問題です。過去問の[3]の続きは以下の記事です。

また、また、本サイトでは院試やTOEICの勉強方法や面接対策などの記事も掲載しているのでそちらもご覧ください。

コメント

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