並列反応・連鎖重合における反応速度論の例題

東工大 物質理工学院

並列反応・連鎖重合における反応速度論の例題

今回は、1次不可逆素反応に従う並列反応と、連鎖重合における反応速度論の問題です。掲載している問題は東工大物質理工学院H29[5]です。

並列反応における反応速度論の例題

(1)以下の1次不可逆素反応に従い、反応物Aが生成物\(P_1\)と\(P_2\)に変化する並列反応について考える。ここで、/(k_1\)と\(k_2\)は各反応の速度定数であり、反応温度は一定とする。

$$A→2P_1(速度定数k_1)$$

$$A→P_2(速度定数k_2)$$

反応開始時(t=0 s)では、系内には反応物Aのみ存在し、その濃度は\([A]_0 [mol・L^{-1}]\)とする。\([P_1]_0=[P_2]_0=0\)時間t[s]では、それぞれの濃度を\([A],[P_1],[P_2]\)とする。

反応物Aの反応速度は、

$$-\frac{d[A]}{dt}=(a)[A]・・・(i)$$

である。したがって、時間tにおけるAの濃度は、式(ii)で与えられる。

$$[A]=[A]_0exp[-(k_1+k_2)t]・・・(ii)$$

一方、\(P_1\)と\(P_2\)の生成速度は

$$\frac{d[P_1]}{dt}=(b)[A]・・・(iii)$$

$$\frac{d[P_2]}{dt}=(c)[A]・・・(iv)$$

で与えられる。Aの濃度が\([A]_0\)の値の半分になるまでの時間\(t_{1/2}\)を(d)と呼び、この時の生成物濃度比から速度定数を求めることが出来る。

(a)~(d)に入る適切な語句または数式を答えよ。

$$-\frac{d[A]}{dt}=(k_1+k_2)[A]$$

上式をAについて求め、積分すると、

$$[A]=[A]_0e^{-(k_1+k_2)}$$

また、係数に注意して生成速度の速度式を求めると、

$$\frac{d[P_1]}{dt}=2k_1[A]$$

$$\frac{d[P_2]}{dt}=k_2[A]$$

\(t_{1/2}\)を\(k_1,k_2\)を用いて表せ

□半減期

半減期とは、反応物が初期濃度の半分になるのに要する時間のこと。

その関係を表すと、

$$半減期t=t_{1/2}のとき、濃度[A]=\frac{1}{2}[A]_0$$

以上より、

$$\frac{1}{2}[A]_0=[A]_0e^{-(k_1+k_2)t_{1/2}}$$

両辺積分して半減期を求めると

$$t_{1/2}=\frac{ln2}{k_1+k_2}$$

時間tにおける生成物\(P_1\)の濃度を求めよ

$$\frac{d[P_1]}{dt}=2k_1[A]_0e^{-(k_1+k_2)t}$$

両辺積分して

$$\int_{0}^{P_1}=2k_1[A]_0\int_{0}^{t}e^{-(k_1+k_2)t}dt$$

$$=-\frac{2k_1[A]_0}{k_1+k_2}[e^{-(k_1+k_2)t}]_{0}^{t}=-\frac{2k_1[A]_0}{k_1+k_2}(e^{-(k_1+k_2)t}-1)$$

④Aの半減期は\(2.4×10^3\) sであり、この時の生成物の濃度比は\([P_1]/[P_2]\)=3.0であった。

速度定数\(k_1,k_2\)の値を求めよ。

□並列反応の濃度比

並列反応があるとき、平衡になる前の反応の、ある段階で生成した二つの生成物の濃度比は速度定数の比となる

以上より、

$$\frac{[P_1]}{[P_2]}=\frac{2k_1}{k_2}$$

\([P_1]/[P_2]\)=3.0より、\(k_2=\frac{2}{3}k_1\)なので、②で求めた半減期と速度定数の関係式を用いて

$t_{1/2}=\frac{ln2}{k_1+\frac{2}{3}k_1}=2.4×10^3$$

したがって、\(k_1,k_2\)は

$$k_1=\frac{3}{5}ln2×\frac{1}{2.4×10^3}=1.73×10^{-4} s^{-1}$$

$$k_2=\frac{2}{3}k_1=1.16×10^{-4} s^{-1}$$

[別解]

$$\frac{d[P_1]}{dt}=2k_1[A]⇒\int_{0}^{[P_1]}d[P_1]$$

\(P_2\)についても同様に求めて、それらの比をとって計算しても答えが出せる。

連鎖重合の反応速度論についての例題

(2)連鎖重合によるポリマーの生成速度では、基本的な反応のステップが3種類ある。そこで、以下に示す反応機構(a)~(e)の5つの素反応により連鎖重合の速度論を考える。

開始ステップ:

(a)I→・R+・R    速度定数\(k_i\)

(b)・R+\(M_1\)→R+\(・M_1\)    (速い)

生長ステップ:

(c)\(・M_n+M_1\)→\(・M_{n+1}\)    速度定数\(k_p\)

停止ステップ:

(d)\(・M_n+・M_m\)→\(・M_{n+m}\)    速度定数\(k_{tc}\)

(e)\(・M_n+・M_n\)→\(M_n+M_m\)    速度定数\(k_td\)

ここで、Iは開始剤、・Rは開始剤から生成するラジカル、\(M_1\)はモノマー、\(・M_1\)はモノマーラジカル、\(M_n,M_m\)はポリマー、\(・M_n,・M_m\)・はポリマーラジカルであり、停止ステップの(d)は再結合(相互停止)、(e)は不均可による停止反応である。(b)の反応は非常に速いものとし、また、速度定数\(k_p,k_tc,k_td\)はポリマー鎖の長さに依存しないと仮定する。

物質の濃度は,[J]のように物資名[]をつけて表記せよ。ただし、モノマーラジカル\(・M_1\)とポリマーラジカル\(・M_n,・M_m\)のラジカル種については、その濃度を[・M]で表記せよ。

①反応(a),(c),(d),(e)の反応速度を\(v_i,v_p,v_{tc},v_{td}\)とし、

それぞれの速度式を示せ

$$v_i=k_i[I]$$

$$v_p=k_p[・M][M_1]$$

$$v_{tc}=[・M]^2$$

$$v_{td}=k_{td}[・M]^2$$

開始ステップにおけるラジカルの濃度の変化速度を求めよ

ラジカルの全濃度が増大する速度は、律速である開始ステップの速度に等しいため

$$\frac{d[・M]}{dt}=2fk_i[I]$$

停止ステップによるラジカルの濃度の変化速度を求めよ

$$\frac{d[・M]}{dt}=-2k_{tc}[・M]^2-2k_{td}[・M]^2$$

反応の定常状態におけるラジカルの濃度を求めよ

定常状態近似より、

$$\frac{d[・M]}{dt}=2fk_i[I]-2k_{tc}[・M]^2-2k_{td}[・M]^2≈0$$

これよりラジカルの濃度は、

$$[・M]=(\frac{fk_i}{k_{tc}+k_{td}})^{1/2}[I]^{1/2}$$

速度論的連鎖長νを求めよ。

速度論的連鎖長ν=(ポリマー鎖の成長速度)/(ラジカルの停止速度)なので、

$$ν=\frac{k_p[・M][M_1]}{(k_{tc}+k_{td})[・M]^2}=\frac{k_p[M_1]}{(k_{tc}+k_{td})[・M]}$$

問題は以上になります。また、本サイトでは大学院試験の準備や試験問題の解説など掲載しているので、試験を受験予定のかたはそちらもご覧ください。

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