ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント[院試で学ぶ(東工大)]

東工大 物質理工学院

[院試で学ぶ(東工大)]ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント

今回はペロブスカイト型構造のイオン半径比の求め方・結晶構造の安定条件やスピネル型酸化物の正スピネル・逆スピネル決定方法と磁気モーメントの関係です。掲載している問題は東工大物質理工学院応用化学系の4B(無機化学)です。同年代の問題はこちらから。

H31 東工大物質理工学院 応用化学系 過去問解答
  1. H31 3A 錯体の酸化・電荷移動・炭素とケイ素の構造比較
  2. H31 4A マーデルング定数・ラチマー図
  3. H31 5A エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出
  4. H31 6A 混合エンタルピー・混合ギブスエネルギーの求め方
  5. H31 3B 錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与・安定
  6. H31 4B ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント(本記事)
  7. H31 5B 水素の動径関数・パウリの排他原理・フントの規則
  8. H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式

ペロブスカイト型構造とイオン半径について

(1)結晶構造に関する下の問①および②に答えよ。

①三元系イオン固体は、カチオンをA,Bとして、アニオンをXとすると、\(A_cB_dX_e\)の組成式で表される。この構造のひとつにペロブスカイト型構造があり、図に示す単位格子をもつ。これについて下の問(a)および(b)に答えよ。

(a)c,d,eの値をそれぞれ記せ。

c=1,d=1,e=3    ⇒\(ABX_3\)

□単位格子の原子数の数え方
角(図でいう青)は1/8、面の真ん中(赤)は1/2、中心(黒)は1

(b)カチオンAとカチオンBの配位数をそれぞれ記せ。

A:12 B:6

②二元系イオン固体の配位数の推定に用いられるイオンの半径比rに関する下の問(a),(b)に答えよ。

(a)カチオンの半径を\(r_c\)、アニオンの半径を\(r_a\)として、rの定義を式で示せ。

ただし、カチオンの半径は、アニオンの半径よりも小さいものとする。

□イオン半径比の定義
イオン半径比rはr<1でなければならない。

従って、rは

\(r=\frac{r_c}{r_a}\)

(b)カチオンの配位数が6である場合、その結晶構造が安定となるrの範囲を、導出過程も含めて答えよ。

□イオン半径比の安定条件の求め方

AとXについての平面図より、

$$2r_a:2(r_a+r_c)=1:\sqrt{2}$$

式をまとめると、

$$r=\frac{r_c}{r_a}=\sqrt{2}-1=0.4$$

スピネル型酸化物における正スピネル・逆スピネルの決定法

(2)スピネル型酸化物\(M_3O_4\)は、イオン電荷が異なるカチオンが\(O^{2-}\)イオンの(a)配列の四面体および八面体間隙を部分的に占有する割合によって、正スピネル、逆スピネル、混合スピネルに分類される。\(Fe_3O_4\)は(ア)逆スピネルである。\(Fe^{2+}\)イオンのすべてと\(Fe^{3+}\)イオンの半分とが、ともに(b)間隙の(c)を占め、残り半分の\(Fe^{3+}\)イオンが(d)間隙の(e)を占める。ここで、(b)間隙の\(Fe^{3+}\)イオンと(d)間隙の\(Fe^{3+}\)イオンのスピンは、(f)に並ぶので(g)。一方、(b)間隙の\(Fe^{2+}\)イオンと\(Fe^{3+}\)イオンのスピンは、(h)に並ぶ。したがって\(Fe_3O_4\)は(イ)フェリ磁性である。

①空欄に入る適切な語句をかけ。

空欄に解答を入れると、

スピネル型酸化物\(M_3O_4\)は、イオン電荷が異なるカチオンが\(O^{2-}\)イオンのccp配列の四面体および八面体間隙を部分的に占有する割合によって、正スピネル、逆スピネル、混合スピネルに分類される。\(Fe_3O_4\)は(ア)逆スピネルである。\(Fe^{2+}\)イオンのすべてと\(Fe^{3+}\)イオンの半分とが、ともに八面体間隙の\(\frac{1}{2}\)を占め、残り半分の\(Fe^{3+}\)イオンが四面体間隙の(\frac{1}{8}\)を占める。ここで、八面体間隙の\(Fe^{3+}\)イオンと四面体間隙の\(Fe^{3+}\)イオンのスピンは、反並行に並ぶので打ち消しあう。一方、八面体間隙の\(Fe^{2+}\)イオンと\(Fe^{3+}\)イオンのスピンは、平行に並ぶ。したがって\(Fe_3O_4\)は(イ)フェリ磁性である。

ここで、スピネル型は\(A^{2+}B^{3+}O_4\)である

□正スピネル型

正スピネル型は\(B^{3+}\)が八面体間隙の\(\frac{1}{2}\)を、\(A^{2+}\)が四面体間隙の\(\frac{1}{8}\)を満たしている。

□逆スピネル型

逆スピネル型は、八面体間隙の\(\frac{1}{2}\)を\(Fe^{2+}\)のすべてと\(Fe^{3+}\)の半分とで満たし、残りの半分の\(Fe^{3+}\)は四面体間隙の\(\frac{1}{8}\)に位置している。

\(Fe^{2+}Fe^{3+}O_4\)を例に、分かりやすく簡潔な図で表すとこんな感じ

逆スピネルのイメージ図

スピネル型酸化物の正スピネル・逆スピネルの決定方法

②下線(ア)について、

\(Fe_3O_4\)が逆スピネルであることを、配位子場安定化エネルギー(LFSE)の考え方を用いて説明せよ。

正スピネルか逆スピネルかを判断するには、各イオンが間隙に入ったときの安定化エネルギーを計算して、最も安定となるのは八面体か四面体かを求める。

ここで考えるのは\(Fe^{2+}とFe^{3+}\)であるが、\(Fe@{3+}\)のd電子数は5つであり、LFSEは四面体も八面体も同じであるため関係ない。したがって\(Fe^{2+}\)のLFSEを計算する。

\(Fe^{2+}\)のd電子数は6つであるため、以下のようにLFSEを計算する。

$$LFSE(八面体)=-\frac{2}{5}Δ_0×4+\frac{3}{5}Δ_0×2=-\frac{2}{5}Δ_0$$

$$LFSE(四面体)=-\frac{3}{5}Δ_t×3+\frac{2}{5}Δ_t×3=-\frac{3}{5}Δ_t$$

ここで、\(Δ_t=\frac{4}{9}Δ_0\)なので

$$\frac{3}{5}Δ_t=-\frac{3}{5}×\frac{4}{9}Δ_0=-\frac{4}{15}Δ_0$$

したがって、Aイオン(\(Fe^{2+}\)が八面体間隙に入ったほうがLFSEが負に大きくなり安定である。つまり、より多くのAイオンが八面体間隙に入ったほうが安定であり、これは逆スピネル構造である。(上記の逆スピネルイメージ図を見てみるとわかりやすい。)

③下線(イ)の飽和磁化について、

\(Fe_3O_4\)の化学式当たりのスピンはオンリーの磁気モーメントを求めよ。

簡単のため、磁気モーメントの単位はボーア磁子\(μ_B\)とし、電子ひとつのスピンオンリーの磁気モーメントを1\(μ_B\)とせよ。

逆スピネル型では、\(Fe^{3+}\)は四面体間隙と八面体間隙に半分ずつ配置されるので、スピンは打ち消される。よって考慮するのは\(Fe{2+}\)のみである。\(Fe{2+}\)は化学式当たりに1つなので、\(1μ_B\)となる。

以上です。院試の勉強方法や面接対策等の記事もあるので、併せてご覧ください。

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