相転移とギブズエネルギー・エンタルピーの例題と解説

東工大 物質理工学院

今回は純物質における相転移と化学ポテンシャルの関係、クラペイロンの式の読み取り方についての解説です。掲載している問題は東工大物質理工学院R2[5B(2)]です。相転移についての類題はこちら。

相転移とギブズエネルギー・エンタルピーの例題と解説

(2)相平衡に関する次の文章を読み、以下の問①~④に答えよ。

ある純物質において、ある相αから別の相βへの相転移を考える。このなかで、相iの物質量\(n^{(i)}\)に対するギブスエネルギー\(G^{(i)}\)の変化を表す状態量\((\frac{∂G^{(i)}(p,T,n^{(i)})}{∂n^{(i)}})_{p,T}\)は、この相の(カ)と呼ばれ記号\(μ^{(i)}\)で表される。ここで、平衡状態ではギブズエネルギー\(G^{(i)}\)が(キ)をとることに等しく、相αと相βとの平衡状態では、それぞれの相における\(μ^{(α)}\)および\(μ^{(β)}\)は一様で、かつ(X)の関係にある。また、ギブズの(ク)では、成分数Cの系においてP個の相が平衡状態にあるとき、示強性変数の自由度の数Fは(Y)で表され、この系では(ケ)あるいは(コ)が示強性変数である。

文章中空欄カ~コにあてはまる適切な語句を示せ。

□化学ポテンシャルと相平衡

純物質において、モルギブズエネルギーと化学ポテンシャルは同じ意味を示す。

つまり、\(G_m = μ\)である。

また、平衡状態では、ΔG=0である。

したがって、

相平衡状態では、物質のいかなる場所も化学ポテンシャルは同一となる。

□相律

任意の組成をもつ系において、

自由度をF、成分の数をC、平衡状態の相の数をPとしたとき

F= C – P + 2

という関係式である。

自由度Fとは平衡状態を維持したまま、任意に動かすことが出来る示強性変数の数である。

例として、純物質においては成分数が1(C=1)なので、自由度は

F = 3 – P

となる。今、気相と液相が平衡状態にあるとすると、P=2なので自由度F=1となる。

示強性変数として、温度や圧力が挙げられるが自由度F=1では、温度(あるいは圧力)は好きな値に設定しても現在の平衡状態は維持できるが、圧力(あるいは温度)は変更した温度に合わせて特定の値に合わせて変更しなければ平衡状態が変化してしまうという事を表す。

もし純物質で1相である場合はF=2なので、温度、圧力ともに任意の値に設定しても相の数が変わることはない。

以上のことをまとめると、解答は

ある純物質において、ある相αから別の相βへの相転移を考える。このなかで、相iの物質量\(n^{(i)}\)に対するギブスエネルギー\(G^{(i)}\)の変化を表す状態量\((\frac{∂G^{(i)}(p,T,n^{(i)})}{∂n^{(i)}})_{p,T}\)は、この相の化学ポテンシャルと呼ばれ記号\(μ^{(i)}\)で表される。ここで、平衡状態ではギブズエネルギー\(G^{(i)}\)がをとることに等しく、相αと相βとの平衡状態では、それぞれの相における\(μ^{(α)}\)および\(μ^{(β)}\)は一様で、かつ\(μ^{(α)}=μ^{(β)}\)の関係にある。また、ギブズの相律では、成分数Cの系においてP個の相が平衡状態にあるとき、示強性変数の自由度の数FはF-C-P-2で表され、この系では温度あるいは圧力が示強性変数である。

③温度TおよびT*における圧力をそれぞれpおよびp*としたときの、

固相/液相境界線の近似式を導出せよ。

ただし、融解に伴うエンタルピー変化\(ΔH_{fus}\)および体積変化\(ΔV_{fus}\)は、温度と圧力によらないものとする。

クラペイロンの式のより

$$\frac{dP}{dT}=\frac{Δ_{trs}S}{Δ_{trs}V}$$

モル融解エントロピーは

$$Δ_{fus}S=\frac{Δ_{fus}H}{T}なので$$

$$\frac{dP}{dT}=\frac{Δ_{fus}H}{Δ_{fus}V}$$

両辺積分して

$$\int_{p*}^{p}dP = \frac{Δ_{fus}H}{Δ_{fus}V}\int_{T*}^{T}\frac{dT}{T}$$

Pについて解くと、解答は

$$p = p* + \frac{Δ_{fus}H}{Δ_{fus}V}ln\frac{T}{T*}$$

□クラペイロンの式の導出

α相とβ相が平衡状態にあるとき、圧力を上昇させるとα相のみになる。さらに、温度も上昇させると再度平衡状態になる。

このとき、α相とβ相の化学ポテンシャルの変化量は同じであるから

dμ(α)=dμ(β)

ここで、

dG = Vdp – SdTより、各相に対して(\(dG_m=dμ\)より)

$$dμ = -S_mdT +V_mdp なので$$

$$-S_m(α)dT + V_m(α)dp = -S_m(β)dT + V_m(β)dp$$

ゆえに

$${S_m(β) – -S_m(α)}dT = {V_m(β) – V_m(α)}dp$$

ここで、左辺は\(Δ_{trs}S\)、右辺は\(Δ_{trs}V\)なので

$$Δ_{trs}SdT = Δ_{trs}Vdp$$

よって

$$\frac{dp}{dT} = \frac{Δ_{trs}S}{Δ_{trs}V}$$

④1成分系の圧力-温度相平衡状態図において、以下の(i)および(ii)についてそれぞれ2行以内で述べよ。

(i)

固相/液相境界線が液相/気相境界線に対して急峻である理由

クラペイロンの式のより、勾配(dp/dT)はモル体積変化に依存する。そのため、液相→気相ではモル体積変化が大きく、固相→液相では小さいため右辺(ΔH/TΔV)が大きくなることで勾配が急峻となる。

(ii)

固相/液相境界線の傾きが、多くの物質において正になる理由

融解エンタルピーは正であり、固相→液相における体積変化も多くの場合正であるため、クラペイロンの式のより右辺(ΔH/TΔV)が正なので傾き(dp/dT)も正になる。

以上が相転移についての例題と解答です。相転移についての類題はこちらです。また、本サイトでは院試についての情報も掲載しているためそちらもご覧ください。

コメント

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