マーデルング定数・ラチマー図[院試で学ぶ(東工大)]

東工大 物質理工学院

[院試で学ぶ(東工大)]マーデルング定数・ラチマー図

今回はボルン・ハーバーサイクルによる格子エンタルピーの求め方・マーデルング定数の求め方・ラチマー図の使い方についてです。掲載している問題は東工大 物質理工学院 応用化学系の4A(無機化学分野)です。その他の問題番号も掲載しています

H31 東工大物質理工学院 応用化学系 過去問解答
  1. H31 3A 錯体の酸化・電荷移動・炭素とケイ素の構造比較
  2. H31 4A マーデルング定数・ラチマー図(本記事)
  3. H31 5A エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出
  4. H31 6A 混合エンタルピー・混合ギブスエネルギーの求め方
  5. H31 3B 錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与・安定
  6. H31 4B ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント
  7. H31 5B 水素の動径関数・パウリの排他原理・フントの規則
  8. H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式

ボルン・ハーバーサイクルで格子エンタルピーを求める

以下の設問(1)および(2)に答えよ。

(1)NaCl(s)が解離して気体のイオン\(Na^+(g)とCl^-\)になる反応の標準モルエンタルピー変化の値(格子エンタルピー)を、ボルン・ハーバーサイクルの図を用いて、符号も含めて答えよ。

ただし、各標準モルエンタルピー変化\(ΔH^0(kjmol^{-1}\)は下表の値を用いよ。

Na(s)の昇華+108\(Cl_2(g)\)の解離+242(基底状態の構成元素からの)NaCl(s)の生成-411
Na(g)のイオン化+502Cl(g)への電子の付加-354
ボルン・ハーバーサイクル

\(\Delta H^0=411+108+502+\frac{1}{2}242-354=+788kjmol^{-1}\)

□ボルン・ハーバーサイクル
結晶構造からいくつかの過程を一巡して再度結晶構造へと戻るようなサイクルを図で表したもの。これにより格子エンタルピーが求まる。
□格子エンタルピー
格子エンタルピーとは、固体が解離して気体のイオンになる反応の標準モルエンタルピーである。なお、格子エンタルピーは必ず正である。

マーデルング定数の簡単な求め方

②格子エンタルピーの推定に用いられるボルン・マイヤーの式に関する下の問(a),(b)に答えよ。

(a)NaClのマーデルング定数Mを導出せよ。ただし、第三近接イオン以上は無視する。

マーデルング定数の求め方

マーデルング定数は中心イオンとその最近接イオン間の距離をd(1)として、第一、第二、第三・・・近接イオンの静電的相互作用の総和である。イオンは+と-交互に並ぶため、第一近接イオンの相互作用を正とすると第二は負、第三は正である。求める式は

\(M=+\frac{第一近接イオンの数}{中心金属との距離}-\frac{第二近接イオンの数}{中心金属との距離}・・・\)

マーデルング定数

以上より、マーデルング定数Mを求めると

$$M=+\frac{1}{6}-\frac{12}{\sqrt{2}}+\frac{8}{\sqrt{3}}=2.13$$

(b)ハロゲン化リチウムのLiFからLiIまで格子エンタルピーがどのように変化するか。

\(\Delta H^0∝\frac{|Z_AZ_B|}{d}\)(\(Z_A,Z_B\)はイオンの電荷)より格子エンタルピーはイオン間距離に比例する。F→Iでイオン半径は大きくなるため\(\Delta H^0\)は小さくなる。

チタンの結晶構造から配位数を求める

(2)チタン(Ti)およびその酸化物に関する下の問①~④に答えよ。

①(a)TiO,(b)\(Ti_2O_3\),(c)\(TiO_2\)のうち、室温において最も導電性が高いものの記号を記せ。

(c)

②\(TiO_2\)の結晶における\(O^{-2}\)イオンの配位数を記せ。

下図より、\(TiO_2\)はルチル型であり、6:3配位であるため酸素イオンの配位数は3である。

ルチル型

ラチマー図から標準電位の求め方

③下に示すラチマー図(塩基性溶液)を用いて、\(TiO_2\)からTiへの還元反応に関する下の問(a)および(b)に答えよ。

(a)\(TiO_2からTi_2O_3\)への還元反応の半反応式を示せ。

$$2TiO_2+H_2O+2e^{-1}→Ti_2O_3+2OH^{-1}$$

(b)\(TiO_2\)からTiへ還元する半反応の標準電位\(E^0\)を求めよ。

\(\Delta G\)の加成性より、

$$\Delta G(TiO_2→Ti)=\Delta G(TiO_2→Ti_2O_3)+\Delta G(Ti_2O_3→TiO)+\Delta G(TiO→Ti)$$

各半反応式を書くと

\(TiO_2→Ti_2O_3\):  \(2TiO_2+H_2O+2e^{-1}→Ti_2O_3+2OH^{-1}\) 

\(Ti_2O_3→TiO\):   \(Ti_2O_3+H_2O+2e^{-1}→2TiO+2OH^{-1}\)  

\(TiO→Ti\):      \(TiO+H_2O+2e^{-1}→Ti+2OH^{-1}\) 

\(TiO_2→Ti\):     \(TiO_2+2H_2O+4e^{-1}→Ti+4OH^{-1}\)

また、\(\Delta G=-νFE\)より(νは電子数)

$$-νFE^0(TiO_2→Ti)=-νFE^0(TiO_2→Ti_2O_3)-νFE^0(Ti_2O_3→TiO)-νFE^0(TiO→Ti)$$

$$4E^0(TiO_2→Ti)=2E^0(TiO_2→Ti_2O_3)+2E^0(Ti_2O_3→TiO)+2E^0(TiO→Ti)$$

以上より、

$$E^0(TiO_2→Ti)=\frac{2×(-1.38)+2×(-1.95)+2×(-2.13)}{4}=-3.80V$$

水分解における光触媒の役割

④化学的に安定な\(TiO_2\)は、種々の光電気化学セルに利用される。例えば、光触媒に用いられる。この時の\(TiO_2\)の役割を説明せよ。

水中で\(TiO_2\)に光を照射すると、\(TiO_2\)の電子は伝導体に励起され、\(H_2OをH_2\)に還元する。この時、価電子帯のホールが生じ、このホールが\(H_2OをO_2\)に酸化することで水の分解が起こる。

     

コメント

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