エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出[院試で学ぶ(東工大)]

東工大 物質理工学院

今回は定圧下でのエンタルピー計算・マクスウェルの速度分布の使い方・分子運動論による気体の状態方程式の導出です。掲載している問題は東工大 物質理工学院 応用化学系の5A(物理化学分野)です。

H31 東工大物質理工学院 応用化学系 過去問解答
  1. H31 3A 錯体の酸化・電荷移動・炭素とケイ素の構造比較
  2. H31 4A マーデルング定数・ラチマー図
  3. H31 5A エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出(本記事)
  4. H31 6A 混合エンタルピー・混合ギブスエネルギーの求め方
  5. H31 3B 錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与・安定
  6. H31 4B ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント
  7. H31 5B 水素の動径関数・パウリの排他原理・フントの規則
  8. H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式

エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出[院試で学ぶ(東工大)]

過去問とその解答案を載せます。また、解答の根拠やキーワード等は適宜解説したページがあるので、不明な点があればそちらも参考にしてください。

定圧下でのエンタルピーの求め方

(1)水を1.0atmの圧力で沸騰するまで加熱した後に、12.0Vの電源から0.5Aの電流を水に熱接触している抵抗に300s流したところ、0.8gの水が蒸発した。水の沸点を373.0Kとする。            

①沸点におけるモルエンタルピー変化を求めよ。

熱量をqとすると

q=0.5A×12V×300s=1800J

また、蒸発した水の物質量は

$$n=\frac{0.8}{18}$$

ここで、圧力一定ではエンタルピー変化は熱量に等しいため

ΔH=q

モルエンタルピーは1mol当たりのエンタルピーなので、

$$\Delta H_m=\frac{q}{n}=+40.5kjmol^{-1}$$

□圧力一定の時のエンタルピー
定義よりH=U+pVなので、dH=dU+pdV+Vdp
また、dU=dq+dwであり、定義よりdw=-pdVなので上記の式に代入して
dH=dq-pdV+pdV+Vdp=dq+Vdp
圧力一定ではdp=0なので
dH=dq
以上より
ΔH=q
※qは状態関数ではないのでΔをつけてはいけない

エンタルピーと内部エネルギー H=U+PV

②理想気体のエンタルピーと内部エネルギーの間の関係式を用いて、沸点における内部エネルギーの変化を計算し、単位\(kjmol^{-1}\)を用いて表せ。

なお、水の沸点T=373.0KのときRを気体定数とすると\(RT=3.1kjmol^{-1}\)である。

H=U+PVであり、理想気体の状態方程式よりPV=nRTなので

$$\Delta U_m=\Delta H_m-RT=40.5-3.1=+37.4kjmol^{-1}$$

③蒸発した水が更に温度373.0Kから393.0Kまで加熱されたときモルエンタルピーの変化はいくらか求めよ。

このとき、水のモル低圧熱容量を\(75.0JK^{-1}mol^{-1}\)とする。

マクスウェルの速度分布による速度の求め方

完全気体における気体分子は以下のマクスウェルの速さの分布に従う。

$$f(v)=4\pi(\frac{M}{2\pi RT})^{\frac{3}{2}}v^2e^{-\frac{Mv^2}{2RT}}$$

ここで、Mはモル質量、Rは気体定数、vは気体分子の速さ、Tは温度である。

なお\(R=8.3JK^{-1}mol^{-1}\)とする。kをボルツマン定数とすると、Mと気体分子の質量mの間には\(\frac{M}{R}=\frac{m}{k}\)の関係がある。下の問①~⑤に答えよ。

①分布f(v)が最大値をとるときの速さである最確速v*を上の式から求めよ。

最大値をとるのはf(v)が極値を取るときであるから、f(v)を微分して

f'(v)=0を計算すると

$$v^*e^{-\frac{Mv^2}{RT}}(2-\frac{Mv^2}{RT})=0$$

よって\(v^*\)は

$$v^*=(\frac{2RT}{M})^{\frac{1}{2}}$$

②27℃における空気中の\(N_2\)分子の平均速さ(v)はどの程度であるか。

$$<v>=(\frac{8RT}{\pi M})^{\frac{1}{2}}={\frac{8(8.3JK^{-1}mol^{-1}(300K)}{\pi (28×\color{red}{10^{-3}kg}mol^{-1})}}^{\frac{1}{2}}=475.8ms^{-1}$$

※\(J=kg m^2 s^{-2}\)であるため分母のモル質量もkg単位に直す。

③3次元で自由に運動できる気体分子の平均の並進運動エネルギーが/(\frac{3}{2}kT\)であることを示せ。

計算においては、以下の積分公式を利用せよ。

$$\displaystyle \int_0^{\infty} x^4e^{-ax^2}dx=\frac{3}{8}(\frac{\pi}{a^5})^{\frac{1}{2}}$$

平均運動エネルギー\(<E_k>=<\frac{1}{2}mv^2>=\frac{1}{2}m<v^2>\)であるから

$$<v^2>=\displaystyle \int_0^{\infty}v^2f(v)dv=4\pi (\frac{M}{2\pi RT})^{\frac{3}{2}}\displaystyle \int_0^{\infty}v^2e^{-\frac{Mv^2}{2RT}}dv=・・・=\frac{3kT}{m}$$

□速さの平均値

速さの平均値はマクスウェル-ボルツマン分布f(v)を用いて以下の式で求めることが出来る。

$$<v^n>=\displaystyle \int_0^{\infty} v^nf(v)dv$$

よって

$$<E_k>=\frac{1}{2}m・\frac{3kT}{m}=\frac{3}{2}kT$$

分子運動論による状態方程式の導出

④x軸に垂直な壁に向かって、x軸に平行に速さ\(v_x\)で飛んでいる質量mの気体分子が、衝突して跳ね返る状態を考える。弾性衝突の場合、衝突前後の運動量の変化は\(2mv_x\)である。これより、以下の式が成り立つことを示せ。

ここで、pは圧力、Vは体積、nは物質量である。

$$pV=\frac{1}{3}nM<v^2>$$

粒子の入った長さ\(v_x\Delta t\)、壁面の面積Aの立方体を考える。

直方体のイメージ図

この直方体の体積をV、アボガドロ数を\(N_A\)とすると、数密度は\(\frac{nN_A}{V}\)であるから、時間\(\Delta t\)経ったとき、この立方体の粒子数は数密度×体積であるので

$$粒子数=\frac{nN_A}{V}×v_x\Delta tA=\frac{nN_Av_x\Delta tA}{V}$$

ただし、粒子の半分は壁面Aとは逆の方向へ向かうため、全運動量変化Δpは

$$Δp=\frac{nN_Av_x\Delta tA}{V}×\frac{1}{2}×2mv_x=\frac{nN_Am\Delta tAvx^2}{V}$$

ΔpをΔtで割ると、単位時間当たりの運動量変化を表し、これは力fであるため、

$$\frac{\Delta p}{\Delta t}=\frac{nN_AmAv_x}{V}=f$$

圧力Pは単位面積当たりの力であるため、fをAで割って

$$P=\frac{f}{A}=\frac{nN_Amv_x}{V}=\frac{nMv_x}{V} (※ここでM=N_Am)$$

粒子は互いに相互作用しないため\(v^2=v_x^2+v_y^2+v_z^2\)であり、各粒子は常に一定の速度で運動するわけではないので、各要素で平均をとって\(<v^2>=<v_x^2>+<v_y^2>+<v_z^2>\)である。また、粒子は自由に運動するため\(<v_x^2>=<v_y^2>=<v_z^2>\)なので

$$<v^2>=3<v_x^2> ⇒ <v_x^2>=\frac{1}{3}<v^2>$$

以上より

$$PV=nM<v_x^2>=\frac{1}{3}nM<v^2>$$

⑤④の式は、完全気体の状態方程式と同じであることを示せ。

④式の中に無理やり運動エネルギーの形を作る。

$$pV=\frac{1}{3}nM<v^2>=\frac{1}{3}n・\frac{2M}{m}(\frac{1}{2}m<v^2>)=\frac{2n}{3m}・\frac{3}{2}kT=nRT $$

$$(※R=N_Ak ,M=N_Amを用いた)$$

続きは東工大 物質理工学院(H31)過去問[物理化学,6A] 解答

コメント

  1. […] 東工大 物質理工学院(H31)過去問[物理化学,5A] 解答の続編です。今回は6Aの解答です。 […]

  2. […] また、東工大の過去問・解答案も掲載しているのでこちらもご覧ください。 […]

  3. […] 東工大 物質理工学院(H31)過去問[物理化学,5A] 解答 […]

  4. […] H31 5A […]

  5. […] H31 5A […]

  6. […] H31 5A […]

  7. […] H31 5A […]

  8. […] H31 5A […]

  9. […] [院試で学ぶ(東工大)]エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方… 化学科である私は何をするのか化学科が何をするのか知りたいですか? 本記事では私の研究内容を通して化学科が学ぶ内容を紹介しています。 本記事を読んで化学科について知っていきましょう!miya-blog.club2020.10.05 院試情報 シェアする Twitter Facebook はてブ Pocket LINE コピー みやぶろがーをフォローする みやぶろがー みやぶろぐ […]

  10. […] H31 5A エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出 […]

  11. […] エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出[院試で学… […]

タイトルとURLをコピーしました