リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式[院試で学ぶ(東工大)]

東工大 物質理工学院

[院試で学ぶ(東工大)]リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式

今回はリンデマン-ヒンシェルウッド機構による速度式の求め方です。掲載している問題は東工大 物質理工学院 応用化学系の6B(物理化学分野)です。その他の問題番号も掲載しています

過去問とその解答案を載せます。学習の参考にしてください。

H31 東工大物質理工学院 応用化学系 過去問解答
  1. H31 3A 錯体の酸化・電荷移動・炭素とケイ素の構造比較
  2. H31 4A マーデルング定数・ラチマー図
  3. H31 5A エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出
  4. H31 6A 混合エンタルピー・混合ギブスエネルギーの求め方
  5. H31 3B 錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与・安定
  6. H31 4B ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント
  7. H31 5B 水素の動径関数・パウリの排他原理・フントの規則
  8. H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式(本記事)

東工大 物質理工学院(H31)過去問[物理化学,6B] 解答

(1)下の問①~③に答えよ。ただし、AおよびA*のモル濃度をそれぞれ[A],[A*]とする。

分子Aが別の分子Aと衝突してA*へと励起される以下の2分子過程を考える。

A+A→A*+A   速度定数\(k_a\)    (i)

式(i)の過程によるA*の生成速度は、速度定数を\(k_a\)とすると、速度式(ii)で表される。

\(\frac{d[A*]}{dt}=(a)\)    (ii)

生成したA*はまた別の分子Aと衝突して、過剰なエネルギーを失うこともある。

A*+A→A+A  速度定数\(k’_a\)  (iii)

式(iii)の過程は式(i)の逆反応であり、速度定数を\(k_a’\)とすると速度式(iv)で表される。

\(\frac{d[A*]}{dt}=(b)\)  (iv)

さらに、(ア)A*は1分子分解によって生成物Pとなることもある。

下線(ア)の過程における速度定数を\(k_b\)とすると、速度式(v)が成立する。

\(\frac{[dA*]}{dt}=(c)\)  (iv)

①文中の空欄(a)~(c)に適切な式を入れよ。

(a) \(k_a[A]^2\)  (b)\(k_a'[A*][A]\)  (c)\(-k_b[A*]\)

②A*の正味の生成速度に定常状態の近似を適用できるとする。以下の(a)および(b)におけるPの生成速度を[A]を用いて記せ。

(a)[A]が十分に大きい反応初期

定常状態近似より、

$$\frac{d[A*]}{dt}=k_a[A]^2-k_a'[A*][A]-k_b[A*]≒0$$

これより[A*]は

$$[A*]=\frac{k_a[A]^2}{k_a'[A]+k_b}$$

[A]が十分大きいとき

\(k_a'[A][A*]>>k_b[A*]\)なので

$$[A*]=\frac{k_a}{k_a’}[A]より$$

$$\frac{d[P]}{dt}=k_b[A*]=\frac{k_ak_b}{k_a’}[A]$$

[A]が十分小さいとき

\(k_a'[A][A*]<<k_b[A*]\)なので

$$\frac{k_a}{k_b}[A]^2より$$

$$\frac{d[P]}{dt}=k_a[A]^2$$

③式(i),(iii)および下線(ア)で表される反応機構はリンデマン-ヒンシェルウッド機構と呼ばれる。[A]の変化速度を、見かけの速度定数\(k_r\)を用いて\(v=k_r[A]\)と仮定し、リンデマン-ヒンシェルウッド機構で反応が進行していることを示すための実験及び結果の解析手順を簡潔に述べよ。

$$v=\frac{d[P]}{dt}=k_b[A*]=\frac{k_ak_b[A]}{k_b+k_a'[A]}[A]=k_r[A]$$

ここで、\(k_r=\frac{k_ak_b[A]}{k_b+k_a'[A]}\)なので、両辺逆数をとって整理すると

$$\frac{1}{k_r}=\frac{k_a’}{k_ak_b}+\frac{1}{k_a}・\frac{1}{[A]}$$

上式で\(\frac{1}{[A]}\)に対して\(\frac{1}{k_r}\)をプロットして直線が得られれば、反応はリンデマン-ヒンシェルウッド機構であると言える。

(2)分子BがCへ不可逆的に変化する反応において、下の問①および②に答えよ。ただし、BおよびCのモル濃度をそれぞれ[B],[C]とする。導出過程 も示すこと。

①2分子のBからCが生成する反応を解析すると、2次反応であった。問(a)および(b)に答えよ。

(a)初濃度\([B]_0\)から[B}に変化するのに要する時間をtとするとき、tを速度定数kと[B]および\([B]_0\)を用いて表せ。

反応式は

B+B→C  速度定数k

$$\frac{d[B]}{dt}=-2k[B]^2$$

両辺積分して

$$\displaystyle \int_{[B]_0}^{[B]} \frac{d[B]}{[B]}^2=\frac{1}{[B]_0}-\frac{1}{[B]}=-2kt$$

よってtは

$$t=\frac{1}{2k}(\frac{1}{[B]}-\frac{1}{[B]_0})$$

(b)速度定数\(k=5.0×10^{-4}Lmol^{-1}s^{-1}\)であるとき、Bの濃度が\(0.200molL^{-1}\)から\(0.010molL^{-1}へ変化するのに要する時間を有効数字2桁で求めよ。

①で求めた式を用いて

$$t=\frac{1}{2×5.0×10^{-4}}(\frac{1}{0.01}-\frac{1}{0.200})=9.5×10^4s$$

②1分子のBからCが生成する反応を解析すると、自己触媒反応であった。B消失速度が速度定数k’を用いてv=k'[B][C]で表されるとき、[B]の減少量xの変化速度(dx/dt)の速度式を記せ。BおよびCの初期濃度はそれぞれ\([B]_0,[C]_0\)とする。

反応式は

B→C  速度定数k’

v=k'[B][C]

また、\([B]=[B]_0-x,[C]=[C]_0+x\)なので

$$\frac{d[B]}{dt}=\frac{d([B]_0-x)}{dt}=\frac{dx}{dt}=-k'([B]_0-x)([C]_0+x)$$

以上です。本問は反応速度論のよくある種類であり、東工大に限らず多くの大学院試験で頻出です。ぜひマスターしてください。

コメント

  1. […] H31 6B […]

  2. […] H31 6B […]

  3. […] H31 6B […]

  4. […] H31 6B […]

  5. […] H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式 […]

  6. […] H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式 […]

  7. […] H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式 […]

タイトルとURLをコピーしました