錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与・安定[院試で学ぶ(東工大)]

東工大 物質理工学院

[院試で学ぶ(東工大)]錯体・平面四角形の構造決定

今回は無機化学の錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与による安定化についてです。掲載している問題は東工大 物質理工学院 応用化学系の3B(無機化学分野)です。その他の問題番号も掲載しています。

H31 東工大物質理工学院 応用化学系 過去問解答
  1. H31 3A 錯体の酸化・電荷移動・炭素とケイ素の構造比較
  2. H31 4A マーデルング定数・ラチマー図
  3. H31 5A エンタルピー計算・マクスウェルの速度分布・状態方程式の導出
  4. H31 6A 混合エンタルピー・混合ギブスエネルギーの求め方
  5. H31 3B 錯体・平面四角形の構造決定・カルボニル錯体の逆供与・安定(本記事)
  6. H31 4B ペロブスカイト型構造の構造と配位数・スピネル型酸化物の磁気モーメント
  7. H31 5B 水素の動径関数・パウリの排他原理・フントの規則
  8. H31 6B リンデマン-ヒンシェルウッド機構の速度式

平面四角形錯体の構造決定

(1)\(PtCl_2(NH_3)_2\)の組成をもち、それぞれが異性体の関係にある平面四角形構造の白金(Ⅱ)錯体A、B、Cがある。以下の記述①~③に基づいて、錯体A~Dの構造式を記せ。

①錯体Aは、等モル量の1,2-ジアミノエタンと反応して錯体Dを与えた。

②錯体Bは、等モル量の1,2-ジアミノエタンと反応しなかった。

③錯体Cは、中心金属に同一種類の配位子が結合したイオン対である。

□エチレンジアミン(en)の構造とその特徴

1,2-ジアミノエタンはエチレンジアミン(en)として知られ、よく出てくる配位子である。下図のようにN-Nがつながっており、en1つで錯体に2か所結合する(二座配位子)

\(PtCl_2(NH_3)_2\)の平面四角形として考えられる構造は下図のような2種類ある。

これらの錯体を等モル量のenと反応させると、2つのアンミン配位子はenに置き換わる。しかし、トランス位では二つのアンミン配位子は遠いためenに置き換わることが出来ない。よってenと反応した方がAであり、しなかった方がBである。

□イオン対
イオン対とは 溶液中で,陽イオンと陰イオンとが静電相互作用により集まり,対をつくること

電気陰性な\(Cl^{-1}\)配位子と電気陽性な\(NH_3\)配位子のHが静電相互作用により会合する。

カルボニル錯体の逆供与による安定化

(1)\(Fe(CO)_5\)は(ア)価の鉄中心をもつ錯体であり、(イ)形構造をもつ。\(Fe(CO)_5\)は、[カ]赤外吸収スペクトルにおいてCO振動吸収に基づく吸収を\(2025cm^{-1}\)と\(2000cm^{-1}\)に示す。\(Fe(CO)_5\)をナトリウムアマルガムで還元すると、\(Na_2[Fe(CO)_4]\)が生成する。\(Na_2[Fe(CO)_4]\)は(ウ)価の鉄中心をもつ(エ)電子の錯体であり、(オ)形構造をもつ。

①文書中のア~オに当てはまる語句を答えよ。

ア:0 イ:三方両錐 ウ:-2 エ:18 オ:四面体

②下線部カについて、\(Fe(CO)_5\)と\(Fe(CO)_3(PPh)_3\)を比較すると、

より大きなCO伸縮振動の値を示すのはどちらの錯体であるかを答えよ。また、その理由を説明せよ。

□π逆供与

COのようなπ受容性配位子のπ軌道は中心金属のd軌道から電子を吸収する。これにより中心金属-C結合は二重結合性が大きくなる。逆に、C-O結合は三重結合性から二重結合性へとシフトする。これをπ逆供与という。

□電子供与性配位子

\(PPh_3\)のような電子供与性配位子(Pの不対電子によるもの)は中心金属に電子を送ることで中心金属の電荷密度を高める(σ供与)。これにより、同一錯体に電子受容性配位子がある場合、そのπ逆供与は強まる。このように、σ供与とπ逆供与は互いに相関関係があり、一方が強くなると他方も強くなる。

□結合強度と波数の関係
結合強度が高いと、検出される波数は高波数である。したがって、波数は単結合<二重結合<三重結合の順に高波数シフトする。

以上のことより、解答は

より大きなCO伸縮振動数:\(Fe(CO)_5\)

理由:

COのLUMOと中心金属のd軌道とがπ逆供与が起こるため、どちらの錯体もπ逆供与が起こる。しかし、\(PPh_3\)は電子供与配位子であり、中心金属の電荷密度を高めることでCOのπ逆供与が強められる。これにより、COのM-C結合は二重結合性が強くなり、C-O結合も二重結合性が強まる。したがってC-O結合の強度が弱まり、赤外吸収スペクトルは低波数シフトする。よって、より大きなCO伸縮振動を観測するのは\(Fe(CO)_5\)である。

π逆供与と吸収スペクトルの問題は東工大では頻出です。過去問はまだ続きます。続きの記事はこちらです。

院試の勉強方法についての記事も併せてご覧ください。

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