安定度定数とは・配位子による置換活性[院試で学ぶ]

東工大 物質理工学院

安定度定数とは・配位子による置換活性[院試で学ぶ]

今回は安定度定数について・キレート効果による安定度定数増加の理由について解説します。掲載している問題はH30東工大物質理工学院応用化学系の[3](無機化学)前半です。同年代の問題はこちらから。

H30 東工大物質理工学院 応用化学系 過去問解答

H30 3前半 安定度定数とは・配位子による置換活性

H30 3後半

H30 4

H30 5

H30 6

以下の設問に答えよ。

全安定度定数の計算

(1)水溶液中での錯体化学に関する以下の問①~④に答えよ。ただし、①の構造式中の水和水は省略してある。

①水溶液中での\(Cu^{2+}\)とアンモニア\((NH_3)\)の錯形成反応は、次のように逐次的に進行する。

\(Cu^{2+}+NH_3⇋[Cu(NH_3)]^{2+}\)       \(logK_1=4.28\)

\([Cu(NH_3)]^{2+}+NH_3⇋[Cu(NH_3)_2]^{2+}\)   \(logK_2=3.56\)

\([Cu(NH_3)_2]^{2+}+NH_3⇋[Cu(NH_3)_3]^{2+}\)  \(logK_3=2.90\)

\([Cu(NH_3)_3]^{2+}+NH_3⇋[Cu(NH_3)_4]^{2+}\)  \(logK_4=2.18\)

各式末尾の\(logK_n(n=1~4)\)は、\([Cu(NH_3)_n]\)錯体(n=1~4)の、それぞれの逐次安定度定数である。

\([Cu(NH_3)]^{2+}\)、\([Cu(NH_3)_2]^{2+}\)、\([Cu(NH_3)_3]^{2+}\)、\([Cu(NH_3)_4]^{2+}\)それぞれに対応する全安定度定数\(logβ_1,logβ_2,logβ_3,logβ_4\)の値を求めよ。

□安定度定数とは

安定度定数(逐次安定度定数)とは:

錯体が生成する方向に記述した錯生成反応において、配位子が一つずつ配位していくときの生成定数のこと。例として、アンミン錯体の安定度定数は

\(Cu^{2+}+NH_3⇋[Cu(NH_3)]^{2+}\)    \(K_1=\frac{[Cu(NH_3)^{2+}]}{[Cu^{2+}][NH_3]}\)

全安定度定数とは:

各反応式が金属イオン単体と配位する配位子が一つずつ配位していくときの生成定数のこと。

\(Cu^{2+}+2(or3,4)NH_3⇋[Cu(NH_3)_{2(or3,4)}]^{2+}\)  \(β_{2(or3,4)}=\frac{[Cu(NH_3)_{2(or3,4)}^{2+}]}{[Cu^{2+}][NH_3]}\)

ここで、\(K_1=β_1\)

また、\(K_n=\frac{β_n}{β_{n-1}}\)

        上記より、

$$logβ_1=logK_1=4.28$$

$$logβ_2=logK_2+logβ_1=3.56+4.28=7.84$$

$$logβ_3=logK_3+logβ_2=2.90+7.84=10.74$$

$$logβ_4=logK_4+logβ_3=10.74+2.18=12.92$$

配位子による置換活性と安定度定数の関係

②以下の図に示すように、\([Cu(trien)]^{+2}\)錯体は、窒素原子間が架橋されていることを除き、\(Cu(NH_3)_4]^{2+}\)とよく似た錯体構造を持つ。しかし、

\([Cu(trien)]^{+2}\)の安定度定数(logK=20.40)は\([Cu(NH_3)_4]^{2+}\)の全安定度定数\((logβ_4)\)よりも極めて大きい。その理由を記せ。

まず、\([Cu(NH_3)_4]^{2+}\)全安定度定数を計算する。

\(β_4=K_1×K_2×K_3×K_4\)なので、

\(logβ_4=K_1+K_2+K_3+K_4=4.28+3.56+2.90+2.18=12.92\)

確かに、\([Cu(trien)]^{+2}\)の安定度定数(20.40)の方が大きい。これはキレート効果によるもの。

□キレート効果とは

単座配位子(\(NH_3\)など)から多座配位子(enなど)へ置換する(キレート化)と錯体の安定し、反応速度も上昇する。大きく2つの要因があるが、以下にその原理を簡単に説明する。

1.例えばアンミン配位子からen配位子にキレート化する。この時、二つのアンミン配位子と一つのen配位子が置換されることで、一つのアンミン配位子が遊離する。これにより、反応エントロピーが増加する。ここで、反応ギブズエネルギー\(Δ_rG=Δ_rH-TΔ_rS\)より、エンタルピーが増加すると反応ギブズエネルギーは負に大きくなる。つまり、反応はより進行しやすくなる。

2.多座配位子の一方が中心金属と結合すると、他方は中心金属のすぐ近くにあるため結合しやすい。

以上がキレート効果による安定度定数の増加理由である。

本記事はここまでであるが、掲載した過去問の続きはこちらです。また、院試やTOEICの勉強法や面接対策なども掲載してますのでそちらもご覧ください。

コメント

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