遷移状態理論・分配関数からアイリング式を導出[院試で学ぶ]

東工大 物質理工学院

遷移状態理論からアイリング式を導出[院試で学ぶ]

今回は、遷移状態理論についての問題です。統計熱力学における分配関数を用いてアイリングの式を導出します。掲載している問題は東工大物質理工学院H30[6](1)です。また、本過去問は以下の問題の続きです。

以下の設問に答えよ。

(1)遷移状態理論(活性錯合体理論)に関する以下の文を読み、問に答えよ。ただし、物質Xのモル濃度を[X],hをプランク定数、kをボルツマン定数、Tを絶対温度、pを圧力、\(N_A\)をアボガドロ定数とする。

衝突理論における活性錯合体

反応物AとBからPが生成する反応において、遷移状態理論では反応物(AとB)は活性錯合体([M*])と平衡になっていると仮定する。

A+B⇌M*→P (i)

活性錯合体の濃度[M*]を平衡定数K*(無次元)で表すと、

$$[M^*]=\frac{N_Akt}{p^0}K^*[A][B] $$

ただし\(p^0=10^5Pa\)

と表される。また、活性錯合体は遷移状態において振動(振動数ν)していると仮定すると、Pの生成速度\(\frac{d[P]}{dt}\)は[A]と[B]を用いて

$$\frac{d[P]}{dt}=cν × (a)=ν × (a)$$

cは透過係数、ここでは1とする。

と表すことが出来る。したがって、νとK*わかると、Pの生成速度が決まる。

M*は実在の分子ではないため、実験定数K*は得られない。そのため、(ア)分子分配関数を使うことによって求める。\(q_x\)をXの標準モル分配関数とすると、

$$K^*=\frac{N_Aq_{M^*}}{q_Aq_B}e^{\frac{-ΔE_0}{N_Akt}}$$

$$ΔE_0=E_0(M^*)-E_0(A)-E_0(B) (ゼロ点エネルギーの差)$$

となる。(イ)\(q_{M^*}\)のうち振動運動の分子分配関数を\(q_{vM^*}\)とすると、

\(q_{vM^*}≈\frac{kt}{hv}\) (ii)

である。このことから、\(q_{M^*}\)から振動運動の分子分配関数\(q_{vM^*}\)を除いたものを\(\bar{q_{M^*}}\)とすると、

$$K^*=\frac{kt}{hv}\frac{N_Aq_{vM^*}}{q_Aq_B}e^{\frac{-ΔE_0}{N_Akt}}$$

となる。

したがって、(i)式全体の反応速度定数\(k_{total}\)を

$$\frac{d[P]}{dt}=k_{total}[A][B]$$

とすると、

$$k_{total}=(b)$$

と求まる。未知のvを含まないこの式は、遷移状態理論の体系化を行った化学者の名前にちなんで(c)の式と呼ばれている。

①文中の(a)~(c)に適切な式または語句を入れよ。

□遷移状態理論の考え方
A+B→C という反応において、生成物Cになる前に、その中間体である活性錯合体C*となり、これが分解して生成物Cになる。

活性錯合体は様々な方向に振動している。

ここで、C*からCとなるためには、C*が反応座標に沿って振動振動したときにCとなる。

これが簡単なイメージである。

これらのことを考慮して、C*→Cの反応速度定数を考えると、反応速度定数は反応座標に沿った振動の振動数に沿った振動の振動数に比例するとして、

$$k^*=cν^*$$

となる。

(a)

$$\frac{d[P]}{dt}=kν × [M^*]=ν × \frac{N_Akt}{p^0}[A][B]$$

(b)

$$\frac{d[P]}{dt}=ν\frac{N_Akt}{P^0}\frac{kt}{hν}\frac{N_A\bar{q_{M^*}}}{q_Aq_B}e^{\frac{-ΔE_0}{N_Akt}}[A][B]$$

$$=\frac{N_A^2k^2T^2\bar{q_{M^*}}}{p^0hq_Aq_B}e^{\frac{-ΔE_0}{N_Akt}}[A][B]$$

(c)アイリングの式

分子分配関数の導出

下線(ア)の分子分配関数について以下の問に答えよ。

分子のエネルギーεが\(ε=ε_T+ε_v+ε_R\)(これらはそれぞれ並進、振動、回転のエネルギーを示す。)であるとき、並進、振動、回転の分子分配関数をそれぞれ\(q_T,q_v,q_R\)とすると、

②分子分配関数qが\(q=q_Tq_vq_R\)となることを示せ。

分配関数の定義より、

$$q=\sum_ie^{-βε_i}$$

である。ここで、\(ε_i\)は状態iの時のエネルギーである。問題文の式を上述の定義に当てはめて、

$$q=\sum e^{-β(ε_T+ε_v+ε_R)}=(\sum e^{-ε_Tβ})・(\sum e^{-ε_vβ})・(\sum e^{-ε_Rβ})$$

$$=q_Tq_vq_R$$

③下線(イ)について、hv/kt<<1であることから(ii)式が成立する。以下の小問(a),(b)に答えよ。

(a)振動のエネルギー準位差がhvであるとき、分子分配関数の定義から振動の分子分配関数\(q_v\)を導出せよ。

□級数の近似

x<<1のとき、

$$1+x+x^2+・・・=\frac{1}{1-x}$$

エネルギー準位差がhvということは、下図のように状態iのエネルギーが(hv)×iということである。

基底準位を0としているが、本当に0であるわけではなく、あくまで基準を0としただけである。

以上のことより、

$$q_v=\sum_ie^{-βε_{vi}}=1+e^{-\frac{hv}{kt}}+e^{-\frac{2hv}{kt}}+・・・$$

$$=\frac{1}{1-e^{\frac{-hv}{kt}}}$$

(b)\(q_{vM^*}≈\frac{kt}{hv}\)が成立することを示せ。

□指数近似

|x|<<1の時

$$e^x=1+x$$

\(e^{\frac{-hv}{kt}}≈1+(-\frac{hv}{kt})\)なので、

$$q_v≈\frac{1}{1-(1-\frac{hv}{kt})}=\frac{kt}{hv}$$

以上が遷移状態理論についての問題です。

また、また、本サイトでは院試やTOEICの勉強方法や面接対策などの記事も掲載しているのでそちらもご覧ください。

コメント

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