トンネル効果の透過率を求める[院試で学ぶ]

東工大 物質理工学院

トンネル効果の透過率を求める[院試で学ぶ]

今回は量子化学におけるトンネル効果での透過率(反射率)の求め方です。掲載している問題は東工大物質理工学院H30[5](2)です。(1)は以下の記事です。

本サイトでは過去問解説を通して大学化学の解説を行っていますので無機・物理化学についてもご覧ください。

階段型ポテンシャルからシュレディンガー方程式を求める

(2)電子移動に関する以下の問①~④に答えよ。

①図1に示す階段型ポテンシャルにおける電子の反射率を考える。

2つの領域(Ⅰ)x<0,(Ⅱ)0<xにおけるシュレディンガー方程式を記せ。ただし、電子のエネルギーをE、質量をm、各領域の波動関数は\(Φ_Ⅰ(x)/),Φ_Ⅱ(x)\)とする。また、各領域でポテンシャルエネルギーVは、(Ⅰ)V=0,(Ⅱ)\(V=V_0>0\)である。

図1                     図2
2
□1次元のシュレディンガー方程式

シュレディンガー方程式は以下のように表される。

$$\hat{H}φ=Eφ$$

ここで、\(\hat {H}\)はハミルトニアン、Eはエネルギー、φは波動方程式である。

これは定義であるので最低限覚える必要がある。

1次元の自由粒子のハミルトニアンは

$$\hat {H}=-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}$$

ここでhはプランク定数である。これもよく出てくるハミルトニアンの形なので覚える必要がある。また、ポテンシャルエネルギーが0でない場合は

$$\hat {H}=-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}+V$$

となる。

以上より、シュレディンガー方程式は

(Ⅰ) \(-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2φ_Ⅰ(x)}{dx^2}=Eφ_Ⅰ(x)\)

(Ⅱ)\((-\frac{h^2}{2m}\frac{d^2}{dx^2}+V_0)φ_Ⅱ(x)=Eφ_Ⅱ(x)\)

②それぞれの領域の波動関数は以下の式で表される。

$$Ⅰ:φ_Ⅰ(x)=Ae^{ikx}+Be^{-ikx}$$

$$Ⅱ:φ_Ⅱ(x)=Ce^{iβx}$$

0<E<\(V_0\)のとき、kとβを①を用いて導出せよ。

まずは、①式からEを求める。

\(\frac{d^2φ_Ⅰ}{dx^2}=-k^2\)なので、

\(\frac{h^2k^2}{2m}=Eφ_Ⅰ\)なので、①式は次のように表せる。

$$\frac{h^2k^2}{2m}φ_Ⅰ(x)=Eφ_Ⅰ(x)$$

左辺と右辺を比較すると、Eが分かる。

$$E=\frac{h^2k^2}{2m}$$

これをkについて解くと、

$$k=\sqrt{\frac{2mE}{h^2}}$$

(Ⅱ)について同様に解くと、

$$β=\sqrt{\frac{2m(V_0-E)}{h^2}}$$

③x=0における境界条件を用いて、反射率|B/A|^2を求めよ。

また、x>0の領域における電子の存在確率について数式を用いて説明せよ。

境界条件は

①\(φ_Ⅰ(0)=φ_Ⅱ(0)\)   /(φ’_Ⅰ(0)=φ^’_Ⅱ(0)\)

①よりA+B=C

また②から

ikA-ikB=iβC=k(A-B)=βC

これらより

k(A-B)=β(A+B)  ⇒  A(k-β)=B(k+β)

以上をまとめて、

\(|\frac{B}{A}|^2=\frac{|k-β|^2}{|k+β|^2}=\frac{|2mE+2mE-2mV_0|}{|2mE-2mE+2mV_0|}=|\frac{4m-2mV_0}{2mV_0}|=|\frac{2E-V_0}{V_0}|\)

0<x<aでは指数関数的に減少し、a<xでは\(|φ_Ⅰ|^2\)の確率で存在する。

トンネル効果の簡単な原理

④次の文章中の空欄(a)~(e)に入る適切な用語や式を答えよ。

生体内では、さまざまな酸化還元反応が進み、その過程では酵素の助けによって電子のやり取り、すなわち、電子移動が起きている。

その現象を図2のような単純な1次元の系を用いて量子力学てきに考える。エネルギーE>0を有する電子が、ポテンシャル\(V_0\)のエネルギー障壁の左側から入射する。この際、Eと\(V_0\)の関係が(a)の時、古典的に考えれば、エネルギー障壁の右側で電子を見出すことは不可能であるが、量子力学的に考えると、障壁の右側に電子が漏れ出しているような現象が起こる。これを(b)現象と呼ぶ。この現象は電子が(c)としての性質を有するために起こる。領域(Ⅰ)に電子を与える(d)が、領域(Ⅲ)に電子を受け取る(e)が存在すると電子移動が起こる。

解答を追加した文章を以下に示す。

生体内では、さまざまな酸化還元反応が進み、その過程では酵素の助けによって電子のやり取り、すなわち、電子移動が起きている。その現象を図2のような単純な1次元の系を用いて量子力学てきに考える。エネルギーE>0を有する電子が、ポテンシャル\(V_0\)のエネルギー障壁の左側から入射する。この際、Eと\(V_0\)の関係が\(E<V_0\)の時、古典的に考えれば、エネルギー障壁の右側で電子を見出すことは不可能であるが、量子力学的に考えると、障壁の右側に電子が漏れ出しているような現象が起こる。これをトンネル現象と呼ぶ。この現象は電子が波動としての性質を有するために起こる。領域(Ⅰ)に電子を与える電子供与体が、領域(Ⅲ)に電子を受け取る電子受容体が存在すると電子移動が起こる。

トンネル効果についての簡単なイメージ図はこちら

エネルギーEは障壁の高さ\(V_0\)より低いにもかかわらず壁の外側へ透過しているように見える。これは粒子が波動性も持つためである。また、壁の中は指数関数的に減少する。壁が厚すぎると波動関数は減少しきって0になるため透過できない。

以上がトンネル効果についての解説です。過去問はまだ続きます。続きはこちら。

また、また、本サイトでは院試やTOEICの勉強方法や面接対策などの記事も掲載しているのでそちらもご覧ください。

コメント

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